遺産分割協議の種類
死亡によって相続が開始し、遺言書がない場合には、遺産分割協議が成立するまでの間、遺産はいったん共同相続人全員の共有となります(民法898条)。
共有となった財産を、各自がどのように分けるのかを具体的に話し合うことになります。この話し合いのことを、遺産分割協議と呼びます。
被相続人が遺言を作成している場合、その遺言で指定された内容に従うことになります。これを「指定分割」と呼びます。
遺言がない場合は、共同相続人全員で話し合いをして、具体的な分割方法を決めることになります。このことを、「協議分割」と呼びます。
遺産分割の種類
■指定分割
遺言書に指定された通りの内容で、遺産を分ける方法です。遺言書がある場合には、まずはその内容が優先されます。
ただし、相続人全員の合意があれば、遺言書の指定とは違う内容で遺産を分割することも可能です。また、遺言書の内容が遺留分を侵害している場合にも、指定された内容とは異なった分割がされる場合があります。
■協議分割
相続人全員で協議をして行う分割方法です。全員の合意があれば、どのような内容で分割することもできます。法定相続分に従う必要は必ずしもありません。
相続人の全員が参加することが必要です。一部の相続人を除いて話し合いをした場合には、遺産分割講義が成立しないことになります。
また、相続人の中に一人でも認知症等の状態の方がいらっしゃって、分割の話し合いができない場合には、遺産分割協議自体が成立しないことになります。そのような場合には、成年後見人を選任してもらう必要が出てきます。
■調停分割
遺言書がなく、相続人の間で遺産分割の話し合いがまとまらない場合には、家庭裁判所の遺産分割調停の手続きを使うことができます。
調停手続きは、当事者から資料を提出したり、遺産を鑑定・評価したりしながら進められます。当事者がどのようなことを望んでいるのかを裁判所が把握し、裁判所から解決案が提示される場合もあります。裁判所からの助言を受けながら、合意を目指して話し合いがされることになります。
遺産分割の方法
■現物分割
「不動産は長男が取得する、株式は長女が取得する、預貯金は二男が取得する」、というように、個々の遺産を各人に分割する方法です。
この方法では、分かりやすい分割が可能になるというメリットがあります。
反面で、相続人間で平等な分割をすることが難しい場合があります。たとえば、「不動産の評価額が大きいけれど、預貯金の額が少ない場合」など、各相続人の間で財産を均等に分けるのが難しくなる場合があります。
■共有分割
遺産の全部または一部を、相続人が数人で取得する方法です。
この方法は、相続人間で公平な相続が可能になるというメリットがあります。
反面で、財産(たとえば不動産)を一度共有にしてしまうと、その後に不動産を売却する際には、共有者全員の合意(売却価格などについての合意)が必要になり、スムーズな売却ができなくなる可能性があります。
また、共有者のうちの一人が亡くなってしまった場合、財産の共有者がさらに増えることになり、財産関係が複雑になる可能性があります。
■換価分割
遺産(不動産など)を売却して現金にし、その現金を分割する方法です。
現物をバラバラにすると価値が下がる場合などは、この方法が採られます。
この方法は、公平な相続ができるというメリットがあります。
反面で、現物(たとえば、思い入れのある実家の土地・建物など)が手元に残せないというデメリットがあります。
また、売却がすぐに出来るとは限らないので、「現金が手元にくるまでに時間がかかる」ということも考えられます。
■代償分割
遺産の現物を1人(または数人)が取得し、その取得者が、他の相続人に対し、相続分との差額を現金で支払うという方法です。
不動産を1人が取得したい場合に、有効な方法です。例えば、農家で、農地を後継者のみに相続させたいような場合に、この方法がとられます。
相続する財産に不動産が多く、現金が少ない場合に、公平な相続ができるというメリットがあります。