相続財産には「不動産」が含まれている場合が多くあります。
相続する不動産には、故人が住んでいた家だけでなく、所有していた農地、山林などまで含まれます。
また時には、抵当権などの権利がついていることがあります。
ここでは、不動産を相続する方法から、相続した不動産を手放す方法、手続きの流れ、不動産の抵当権を抹消する方法まで、専門家である司法書士が解説します。
目次
不動産相続の流れ
相続が発生してから、不動産を相続するまでの流れを簡単に解説します。
遺言書の有無の確認
基本的に、相続において遺言書の内容が最優先されます。
たとえ、遺産分割協議後に遺言書が見つかったとしても、遺言書の内容が優先されるほど優先度が高いです。
ですので、相続が発生したらまずは遺言書の有無を確認してください。
法定相続人の確定
相続人を調べるためには、被相続人の戸籍謄本を取り寄せ、出生から死亡まで調べる必要があります。
新たな相続人が途中で発覚した場合、遺産分割協議がやり直しになる可能性があります。
なるべく早く相続人か確定させて、遺産分割協議がやり直しにならないようにしましょう。
財産の特定
相続人の特定作業と並行して、被相続人の財産を特定し、財産目録を作成します。
不動産が相続財産に含まれるかどうかを判断するためには、市区町村から送られてくる固定資産税の納税通知書を確認します。
また、納税通知書を発行した市区町村の役所で「名寄帳」の写しを入手することで、被相続人が所有する不動産の情報を一覧で確認できます。
納税通知書が入手できない場合は、所有する不動産があると思われる市区町村で名寄帳を調べる必要があります。
財産目録の作成・遺産分割協議
財産目録とは、相続財産の詳細をまとめた一覧表です。
遺言がない場合、相続人全員と遺産分割協議を行います。
その際に、財産の特定が必要になり、財産目録があると円満な相続を行うことができます。
また、遺言執行者が指定された場合、遺言執行者は相続人に対して相続財産目録を作成し、交付する義務を負います。
財産の特定にはかなりの時間がかかります。
相続人のご負担も考慮し、生前に財産目録を作っておくことをお勧めします。
相続財産の名義変更
不動産を相続した場合、相続した土地の名義を変更します。(=相続登記)
2024年4月1日から相続登記が義務化されます。
現時点で登記をしていない土地も対象となるので注意が必要です。
不動産を相続する方法
不動産評価額は、時価で計算されます。
建築時、購入時ではないので注意が必要です。
現物分割
例として、相続人が2人・相続する不動産が二つ場合、それぞれがひとつずつの不動産を相続するという方法です。
現物分割のメリットは、手続きが楽だという点です。
しかし、不動産評価額の違う不動産を相続し、もめることもあるので注意が必要です。
代償分割
代償分割とは、不動産を現物で相続した相続人が他の相続人に対して、分割した相応の金額を他の相続人に支払うという方法です。
具体例として、以下のケースを想定します。
相続人は子供3(A=不動産を相続,B,C)
財産は不動産評価額3000万円の不動産のみ
この場合、Aは評価額3000万の不動産を相続したので、B,Cに対して1000万円ずつ支払う(3000÷3)のが代償分割です。
代償分割は、当事者間で合意ができれば代償金の額は均等である必要はありません。
換価分割
不動産を売却し、手元に残った金額を分割するという方法です。
売却価格が3000万の場合、その3000万を相続人で分割する方法です。
不動産の相続を望んでいない場合や、現金が早く必要な場合に換価分割を行うことが多いです。
共有名義
共有名義とは、複数の相続人が共有で相続する方法です。
共有名義にすると、それぞれの相続人が所有する割合を持分割合として登記します。
この方法が、代襲相続が発生した場合、相続人が亡くなった場合など、
揉め事がおきることが多いので特に注意が必要です。
抵当権抹消とは?
まず抵当権の抹消についてよくご相談者様より「聞いたことはあるけど、あまり意味が分からない」と仰られることが多いので説明します。
抵当権抹消とは、不動産に設定されている抵当権を登記簿から抹消することです。
不動産を買う際に、住宅ローンを利用すると借り入れの担保として「抵当権」を設定しますが、住宅ローンを払い終わると金融機関は抵当権を設定する必要がなくなります。
そこで抵当権抹消登記をし、住宅の抵当権を外します。
もし抵当権を抹消しないと将来不動産の売却ができなくなってしまうなどの問題が発生してしまうので住宅ローンを完済したらすぐに抵当権抹消登記をされることをおすすめします。
さらに注意点として抵当権抹消登記は住宅ローンを払い終わっても自動でされることはなく、ご自身で行うか司法書士が代理で行う必要があります。
抵当権を抹消しなかった場合のデメリット
住宅ローンを完済したのにもかかわらず、抵当権を抹消する登記を行わなかった場合、どんな問題が発生するのでしょうか?
抵当権抹消登記を行わなかった場合のデメリットを4つ解説します。
新たに住宅ローンを組むのが困難
抵当権抹消登記を行わないと、土地や不動産を担保にして新たに住宅ローンを組むことができません。
登記簿上に抵当権が残っている=住宅ローンを完済していない、というわけですから土地や不動産を担保にして新たに住宅ローンを組むということは難しいです。
不動産の売却が困難
抵当権抹消登記を行わないと、不動産を売却が難しくなります。
抵当権は1つの物件に対して二重に設定することができないからです。
買い手が抵当権付きの不動産を購入する際、買い手は新たにローンを組むことができないということです。抵当権付きとは債務が残っている状態ですから、通常金融機関は追加融資を行いません。
買い手からすると住宅ローンは使えない、別の抵当権者が債権を主張してくるリスクがあるため抵当権付きの不動産は売れない可能性が非常に高いです。
金融機関の登記情報が更新され手続きが大変
抵当権抹消登記を行わないと、のちの手続きが煩雑なものとなります。
金融機関からの資格証明書や委任状といった抵当権抹消登記に必要な書類は、その書類が出た時点での内容となっています。
金融機関の代表や経営体制の変更に伴い、その登記情報が変更となることがあるのです。
抵当権を抹消する場合、その間の変更の履歴をすべて書面として集める必要が出てきます。そうなった場合、書類をすべて揃えるのはとても大変なのです。
再発行できない書類がある
長期間、抵当権の抹消登記を放置していると、必要な書類を紛失してしまうことがあります。
金融機関関係の書類は連絡すれば再発行可能ですが、登記識別情報通知書および登記済証は、紛失しても再発行されないので注意してください。
登記識別情報通知書および登記済証を紛失してしまっている場合、事前通知制度または資格者代理人(司法書士など)による本人確認情報制度を利用しなければならないため、手続きがさらに煩雑なものとなり時間も要します。
では、抵当権抹消登記にが何が必要?
住宅ローンが完済して、抵当権抹消の登記をする際には、
下記のものが必要です。
1.銀行などから送られてきた、抵当権抹消用書類一式
その中身は以下の通りです。
・抵当権の解除証書
・抵当権を設定した際の権利証(または登記識別情報通知)
・銀行の委任状
・銀行の資格証明書(会社の登記事項証明書)
2.お客様の認印
登記用の委任状に、署名押印を頂きます。
※シャチハタの印(スタンプタイプの印)では登記できません。
通常の認印(三文判)であれば平気です。
3.お客様の身分証(運転免許証など)のコピー
※身分証の原本を持ってきて頂ければ、当事務所でコピーが取れます。