未成年者と特別代理人
(1)相続人の中に未成年者がいる場合には、遺産分割できるの?
相続人が確定し、相続財産の調査も終わると、次は相続人全員で遺産分割協議をすることになります。
「相続財産のうち、誰が何を相続するか」という具体的な話し合いをします。
その時に、相続人の中に未成年者がいる場合には、未成年者が単独で遺産分割の話し合いをすることはできません。
未成年者は単独で法律行為をすることができないためです(民法5条)。
このような場合は、未成年者の親が法定代理人として遺産分割協議に参加することになります。
しかし、その親自身が相続人である場合があります。
(例)夫が死亡。
相続人は、妻と子。
子供が未成年者の場合には、妻(未成年者の母)は自分自身も相続人にあたります。
このような場合には、母親の利益と子供の利益が相反する状態になります。
この状態では、母親は子供の代理人にはなれません。
このように、未成年者とその親が共に相続人になり、互いに利益が相反する場合には、未成年者が遺産分割によって不利益に扱われないようにするため、「特別代理人」を選任する必要があります。
特別代理人の選任申立ては、未成年者の住所地を管轄する家庭裁判所に対して行います。
(2)特別代理人の選任申立手続き
特別代理人の選任申立てをすることができるのは、親権者と利害関係人などです。
先の例で言えば、未成年者の母親は申立てをすることができます。
申立てに当たっては、特別代理人の候補者を記載します。
親族(未成年者のおじ・おば・祖父母など)が特別代理人候補者になる場合が多いです。
申立ての際の必要書類は下記のとおりです。
・親権者、子の戸籍謄本、各1通
・特別代理人候補者の戸籍謄本
・遺産分割協議書の案
あらかじめ、どういう内容の遺産分割協議をするのか案を作り、申立書と一緒に提出します。
申立てをしてから特別代理人選任の審判がされるまで、1か月程度の時間かかります(事案や申立てをした裁判所によって異なります)。
審判が下りた後は、特別代理人が未成年者に代わって遺産分割協議を行います。
特別代理人が署名・押印をします。その際に、特別代理人の実印を使うことになります。