(1)成年後見制度の利用
相続財産の遺産分割協議においては、相続人の全員が話し合う必要があります。
もし、相続人の中に高齢で認知症の方がいて、判断能力が十分でない場合、そのままの状態では遺産分割協議を行うことはできません。
判断能力が十分でない方のために、成年後見制度があります。
この制度を利用して、遺産分割協議をすることになります。
ご本人の判断能力の度合いに応じて、
・成年後見人(判断能力がほとんど無い場合)
・保佐人(判断能力が著しく不十分な場合)
・補助人(判断能力が不十分な場合)
が選任されます。
成年後見人が選任された場合には、成年後見人が本人を代理して、遺産分割協議を行います。
保佐人が選任された場合には、本人が遺産分割協議をすることについて、保佐人が同意をします。
補助人が選任された場合には、補助人には特定の法律行為にだけ代理権が認められます。
その補助人に、遺産分割の代理権があることが認められている場合には、補助人が本人を代理して遺産分割協議をします。
成年後見制度の概要については、こちらをご覧ください
(2)誰が成年後見人等に選任されるか
成年後見人の選任申立ては、本人の住所地を管轄している家庭裁判所に対して行います。
申立てをした後に、成年後見人等になる人を家庭裁判所が決めます。
親族がなる場合もありますし、第三者(弁護士や司法書士等)がなる場合もあります。
ただし、ご本人と利害関係のある人はなれない可能性が高いです。
たとえば、親(Aさん)が亡くなって遺産分割協議をするにあたり、子供のうちの1人(Bさん)が判断能力がなかったとします。
この場合、Bさんの兄弟(Cさん)は、利害関係があると言えます。
2人とも相続人であり、遺産分割協議をする相手同士であるからです。
したがって、Cさんが成年後見人になれる可能性は高くないといえます。
もし、Cさんが成年後見人に選任された場合には、そのままでは遺産分割協議をすることはできません
(BさんとCさんの利益が相反するものなので、CさんはBさんを代理することができないから)。
その場合には、遺産分割協議を行うための特別代理人の選任の申立てが必要になります。
(3)成年後見人等の選任申立ての手続き
家庭裁判所に対して申立てを行います。
※この申立て書類の作成等は、当事務所でサポートが可能です。
申立てをしてから実際に審判が出るまでは、4~6か月程度かかることがあります。
成年後見人が選任された場合には、成年後見人が本人を代理して遺産分割協議を行います。
遺産分割協議書に、成年後見人が署名・押印をします。
その際に、成年後見人の実印を使い、印鑑証明書も添付します。
(被後見人ご本人の実印・印鑑証明書を使うわけではありません。)
また、その後に相続の登記をする場合には、成年後見人の登記事項証明書を添付します(法務局で取得することができます) 。
(4)成年後見人の選任申立てをした場合の費用
申立については、当司法書士事務所が代行して書類作成・提出をすることができます。
その場合、通常の相続業務報酬のほかに、下記の費用が加算されます。
当事務所の報酬:100,000円
戸籍・住民票などの取得を依頼された場合:1通につき1,500円の報酬
収入印紙・郵便切手代などの実費(裁判所に提出するもの):10,000円
鑑定費用(判断能力を医師が鑑定する際の費用):50,000~100,000円程度(ケースにより異なります)
また、成年後見人の選任の際に、裁判所が必要と判断すれば、成年後見監督人が選任される場合もあります。その場合には、監督人に対する報酬が発生する場合があります。
費用の詳細については、ご相談の時に説明いたします。